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中期計画

2021年9月15-16日 生協労連第54回定期大会議決

生協労連第8次中期計画

【1】はじめに

(1) はじめに

 2020年1月から始まった新型コロナウイルス感染拡大は、わたしたちはもとより、全世界の人々の命と暮らしに重大な困難をもたらしました。すべての人に「命」が突きつけられ、価値観が根底から揺さぶられています。誰もが命と暮らしの危機から逃れられない現実は、わたしたちに否応なく政治の異常さと向き合わせることとなりました。「100年に一度の危機」に、政治が市民の命と暮らしに向き合わない、誰もが想像できなかった異常事態です。
 そうした中、このままではいけないと多くの人が声を上げています。命と暮らしに直結した「政治のおかしさ」への気づきは、人々の認識を変えました。暮らしに直結した怒りは一過性のものではなく、社会や文化、そして政治をも変革する土台となるものです。
 新型コロナウイルスに直面した人類的危機は、現実の経済社会のもと、さらなる格差と貧困の拡大を招いています。このような危機にあっても、富めるものはさらに富み、貧困層は、感染への不安を抱えながら働き、職を失い暮らしを脅かされています。自己責任が蔓延している新自由主義に覆い尽くされた社会を、自立と連帯、共存の人類社会・経済へ、大きく切り替えていくときです。
 わたしたち生協労連は、非正規労働者が多数である「特異」な労働組合として、格差と貧困の解消のために、労働運動の先頭に立ってたたかってきました。社会のあり方の変革を求める「270万円政策(賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策)」を提起し、「7時間働けば普通に暮らせる社会」が必要であると訴えてきました。新自由主義のもと破壊されてきたセーフティーネットの脆弱性が露呈した今、この「政策」の重要性・必要性が立証される事態となっています。
 第8次中期計画(2021~2023年度)では、新型コロナウイルス感染拡大によって生まれた新たな事態を念頭に置きながらも、生協労連がすすめてきた政策・運動・方針に確信を持ち、新たな状況や運動の変化に学び、また、SDGs(持続可能な開発目標)や人権保障にかかわる国際社会の認識の発展も反映させつつ、今後3年間にめざす基本方針と重点課題を提起するものです。職場を基礎に、地域に根ざす運動を抜本的に強化して、「私」が声を上げ、地域から自立と連帯、共存の人類社会・経済を実現させる運動をすすめていきましょう。

(2) 文書の構成

① 【1】はじめに

② 【2】第8次中期計画の位置づけ

③ 【3】社会の変化の特徴と労働組合

④ 【4】生協労連の組織の現状と課題

⑤ 【5】第8次中期計画の要旨とスローガン、方針の柱

⑥ 【6】第8次中期計画方針

⑦ 【7】第8次中期計画の最重点政策課題と、生協労連の組織課題

 

【2】第8次中期計画の位置づけ

1.第7次中期計画(2015年9月~2018年9月)の概要

 

 2020年度は第7次中期計画補強方針(2018~2020年度)の最終年度ですが、そのベースとなる第7次中期計画(2015~2017年度)の概要は次の通りです。

(1) 第7次中期計画のスローガン
働くものの団結で人権と平和が守られる持続可能な世界と社会をつくり、
ディーセントワークとジェンダー平等社会の実現をめざそう

(2) 第7次中期計画でめざす基本的な考え方と具体的課題(概要)
① 平和な世界の実現
② 安心して暮らしつづけられる公正な社会の実現
③ 均等待遇の実現
④ 安心して働きつづけられる生協(会社)と職場の実現
⑤ 生協の社会的役割の追求と民主的労使関係の実現
⑥ 労働組合の拡大・強化と労働組合としての社会的役割発揮の実現
⑦ 国民が主人公の政治の実現

2.第7次中期計画の補強方針(2018年9月~2020年9月)の概要

 

 2018年9月におこなわれた第51回定期大会では、第7次中期計画期間中の教訓・課題を踏まえ、第8次中期計画を策定せず、第7次中期計画の補強方針を確認しました。その概要は次の通りです。

(1) 生協労連の果たすべき役割と運動課題
① 貧困と格差の撲滅
② ディーセントワークの実現
③ ジェンダー平等の実現(均等待遇の実現とあわせて)
④ 生協と関連で働く労働者の要求実現、生協改革の実現
⑤ 労働組合の組織拡大・強化

(2) 7中計補強方針(2018~2020年度)で掲げた最優先課題
① 「270万円政策」を具体的な運動的課題に引き上げていく
② 徹底的な単組組織の強化を組織課題の最重点に置く

3.第7次中期計画期間に発展させてきた「270万円政策」をめぐって

 

(1) 生協労連では、「均等待遇」(2002年度~)や「最賃闘争」(2007年度~最賃闘争委員会)などの重要政策を確認し、運動を強化してきました。第5次中期計画(2004~2006年度)では、現在まで引き継がれる方針のベースとなる「すべての労働者のディーセントワークとジェンダー平等社会の実現」をかかげ、非正規労働者の待遇改善を重点課題として推進してきました。


(2) 同時に、総合的な政策が不可欠として、2011年度にディーセントワーク委員会を発足させ、2014年5月につづき、2016年11月に「憲法が息づく新しい社会システムと働き方をめざすシンポ」を開催し、政策文書「一人ひとりが自立できる社会システムと働き方をめざそう」を提起しました。この政策では、最低賃金1,500円、年間1,800時間労働を提起していることから、略称を「270万円政策」としてきました。今後、内容がある程度分かるよう、「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」と呼ぶようにします。


(3) この「政策」は、これまでの賃金だけに極端に依存していた社会から、欧州のように賃金と社会保障のセットでなりたつ社会へ、家族単位から個人単位のシステムにし、人権が尊重される社会をめざそうというものです。当面の具体化要求として、①賃金-最低賃金1500円と公正な賃金として同一価値労働同一賃金の実現、②社会保障-最低保障年金制度の創設、医療と介護制度の拡充、③子育て・教育-児童手当の拡充、高校までの教育費無償化、大学授業料の引き下げ、奨学金制度の拡充、④住宅-公営住宅の増設、住宅補助費の拡充、⑤働くルール-一日7時間・週35時間・年間1800時間の実現、不払い労働の根絶、休日増・有休100%消化、失業時の保障などを5本の課題とし、税金の使い方と集め方をかえれば財源は確保できるというものです。低賃金で働く非正規労働者や、長時間労働を余儀なくされている正規労働者など、すべての労働者のディーセントワークとジェンダー平等社会の実現には、こうした新しい社会システムの変革が求められます。

4.第8次中期計画で重視したい3つの課題と方針の柱

 

(1) 第8次中期計画における重点課題

① 8中計は、5中計(2004~2006年度)以降の成果・到達点を基礎にして、「ディーセントワークとジェンダー平等社会」を実現するために、「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」を推進することを基軸にすえた計画とします。社会の進展を反映させながら、「人権尊重」「非正規運動の中心的な役割をになう労働組合」をさらに発展させ、その実践を通じて、組織と運動のあり方を発展・変革します。

② そのためにも、以下の3つの課題を重点的に強化します。

1) 第一に、より人権(個人の尊厳)を大事にする労働組合として、職場・分会を、参加と自治・民主主義、自己決定を保障する場として強化することを、すべての基礎に据えます。

2) 第二に、「非正規運動の中心的な役割をになう労働組合」として、最低賃金と均等待遇を重点としながら、職場に運動の軸足をおきつつ、地域の非正規と中小企業労働者と共闘し、「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」実現への運動をつくります。そのために、地連を中心に組織運営を見直します。

3) 第三に、SNSなどによるつながり方の変化、人権意識の高まりを反映して、つながり方を革新していきます。個人発の市民運動との連携や、「市民と野党との共闘」を広げていきます。

 

(2) 第8次中期計画でめざす方針の柱

 8中計における重点課題(3点)は前項の通りですが、以下の方針の柱にそって、総合的な前進をめざします(具体的内容は【6】)。

① 平和で持続可能な世界の実現をめざします。

② ディーセントワークとジェンダー平等社会をつくるために、自己責任社会と決別し、賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざします。

③ 「私」が変える職場、地域、社会。一人ひとりが声を上げ、個人が主人公となる社会をめざします。

④ 非正規運動の中心的役割をになう労働組合として、より一層の役割を果たします。

⑤ 安心して働き続けられる生協(会社)と職場をめざします。

⑥ 職場を基礎に労働組合を強化し、なかまを増やします。

【3】社会の変化の特徴と労働組合

1.この5年間の情勢の特徴

 第7次中期計画(及び補強方針)期間中、国内政治では第二次安倍政権が長期継続し、現在はその継承をかかげる菅政権に引き継がれています。安倍政権は、アベノミクスで幻想を振りまき、官邸主導の強権政治体制を構築して、国会多数を力に数々の悪法を通してきました。政治の私物化が同時に極まり、その姿が市民に露呈するもと、安倍政権は病気を理由に終焉を迎えました。菅政権は、安倍政権からの政策の継承とともに、「自助、共助、公助」をかかげ、政治が自己責任を国民に押し付ける異常な政権としてスタートしました。コロナ禍で公的責任を放棄する姿勢と、あまりにも冷徹な政策執行に、国民の支持率も一気に降下し、政治転換の必要性は待ったなしの状態です。

 様々な困難のもとでの約5年間でしたが、私たちと世界の諸国民のたたかいは、次のように展望を切り開いてきました。

 

(1) 第一に、「『私』が声を上げることで社会が変わる!」ということが明らかになったことです。

① 世界では、キャンドル革命(2016年)、気候ストライキ(2018年~)、Black Lives Matter(2020年)など、市民・個人が声を上げ、社会に変革をもたらしてきました。

② 日本では、未来のための公共、英語民間試験導入延期・共通テスト記述式撤回、FlowerDemo、#検察庁法改正案に抗議します、など、若者や女性が声を上げ、政治と社会に大きなインパクトを与えてきました。

 

(2) 第二に、市民の声を背景に、野党共闘が大きく前進していることです。

① 2015年に戦争法廃止の一点で始まった野党共闘は、暮らしや民主主義の課題を含む、13項目の「合意」による野党共闘にまで前進しています。

② 数々の野党合同ヒアリング、○○追及チーム結成、野党合同での法案提出など、国会内でのたたかいでも共闘がすすみ、信頼が築かれてきています。

③ 戦後初の国政選挙での野党共闘が実現し、2016年参議院選挙では32の一人区のうち11の選挙区で野党共闘が勝利しました。国政・首長選挙でもいくつもの共闘と前進を積み重ねています。政権問題についての協議・前向きな合意まであと一歩です。

④ 立憲民主党、日本共産党は、それぞれ、野党共闘を推進して2021年総選挙で政権交代をめざす方針を確立しました。

 

(3) 第三に、国際平和の実現に向けて、困難があっても着実に前進を積み重ねてきたことです。

① 核兵器禁止条約が採択(2017年)され、50カ国が批准し、2021年1月22日に同条約が発効しました。平和を願う世界の諸国民が実現した戦後最大の偉業です。批准国は54カ国に到達しています(2021年2月23日現在)。

② 板門店宣言(2018年)と米朝首脳会談(2018年、2019年)により、東アジア最大の平和課題である北朝鮮の核問題の解決と朝鮮戦争終結に向け、事態が大きく変化したことです。

③ 辺野古新基地建設が強行開始(2017年)されたもとでも、オール沖縄が連続勝利し、日本政府を追い込んでいます。平和を願う世論はイージス・アショア配備計画を撤回させました。

 

(4) 第四に、利潤追求を極限まで求める新自由主義の限界が露呈し、貧困と格差が極限まで拡大する状況の中でも、暮らしと命を第一にする政治の実現を求める声が着実に大きくなっていることです。

① 全国一律最低賃金制を求める運動が、自民党に議員連盟が誕生させるなど、政治に劇的な変化をもたらしました。

② 野党共闘の合意は、戦争法廃止にとどまらず、くらし・経済分野に広がりました。コロナ禍に直面し、立憲民主党の枝野代表は、新自由主義を批判し、そこからの脱却、転換を提起しました。「社会保障と税の一体改革」(2012年自公民三党合意)路線から脱却する展望も見えてきました。

 

→ 私たちの運動が結実した部分とそうでない部分もありますが、一人ひとりの人権を保障し、国民・市民の命と暮らし第一にする政治への転換が、切実に求められています。

2.社会変化のなかの労働組合

 

 社会の変化を引き起こした主体的な力は、私たち労働組合も発揮してきたことは間違いありません。同時に、労働組合の力が及んでいない領域で社会が動いている現実を直視し、連携を広げながら学び、改革していくことが必要です。そのことが労働組合の力になります。

(1) 総がかり行動・野党共闘の基盤をになう労働組合
① 戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合を基礎にした「共闘」の枠組みは、かつてない規模に広がっています。
② 労働組合(等)が「職場」を出発点に練り上げてきた要求・政策、運動、そして財政は、総がかり行動などの市民と野党の共闘の基盤を支えています。

(2) 最低賃金にかかわるとりくみでの変化と前進
① 生協労連は市民運動に学び、連携し、サウンドデモや非正規メーデーを成功させてきました。
② 最低生計費調査に主体的にとりくみ、マスコミ報道とSNSに火がつき、社会に大きなインパクトを与えました。
③ 地域で大学(教員)などとの結びつきも生まれ、新たな実践が生まれています。審議会も変化し、自民党に議員連盟が誕生し、全労連の企画に自民党議員が参加するなど、かつてない変化が生まれています。
→ 生協労連は、労働運動の課題を、政治・社会の課題に引き上げる上で、大きな役割を果たしてきました。

(3) 市民運動との関わりを通じた労働組合の変化
① 街頭宣伝を変化させてきました。映像・動画配信などの活用も広がり、受け手が受け止めやすい伝達方法を追求しています。
② SNSでの発信でも様々チャレンジが始まっています。医労連等では発信する主体が広がり、とりくみを着実に前進させています。
③ 国会パブリックビューイングなどの市民運動との関わりも生まれています。
④ SNSで広がる多様な市民運動の事務局機能を担う地域労連も生まれています。

(4) 現在の労働組合の社会的弱点
① 労働組合への組織率は全労働者の約17%です。諸外国と比較して著しく低いわけではありませんが、諸外国のように国民から労働者の代表として認知され期待されている状況にはありません。また、「たたかう労働組合」の組織率は1%強とごくわずかです。生協では労働組合加入者が「多数」との認識も一部にはありますが、しかし実際には、アルバイト、委託・子会社、介護など未組織労働者が「多数」いることも事実です。
② 社会は格差と貧困が極まり、その変化が切実に求められ、あちこちで「私」が声を上げています。一方、労働組合は、そうした社会を変える動きが頻発するなかで、その一翼を担っていますが、運動を推進する代表であるとは認知されていません。
③ 労働組合では、役員を中心に、SNSに参加できない・しない、発信できない・しない人がとても「多い」状況です。政党や市民団体などが積極的にSNS社会に参加をしている中、異常とも言えるほど、その姿が見えない状況です。
④ 日本での労働組合は、全体としては縮小傾向にあります。若い世代や非正規労働者などを代表する組織への、世代や構成の引き継ぎは遅々として進んでいません。また、合意形成や手続きに時間がかかることもあり、現実の急速な変化に対応できていないことも、「代表」として認知され、期待される存在になりえていない要因となっています。
⑤ 一方、首都圏青年ユニオンなど、その組織規模に比して、大きな発信力を持ち、多大な成果を勝ち取っている労働組合もあります。これらの先進例などにも学びながら、到達点に確信を持ちつつ、弱点克服にチャレンジしていくことが必要です。

 

3.新型コロナウイルス感染拡大と私たち・社会

 

 新型コロナウイルス感染拡大のインパクトについては「はじめに」に記載しました。私たちは今、大きな社会変化の真っ只中にあります。

 

(1) 市民の命と暮らしを守ることが政治の第一の使命であることの「全国民的体験」

① 戦後最大ともいえる「国難」に直面しているにも関わらず、安倍・菅政権の自らの利権にしか目を向けない態度、自助を強要する政治は、多くの国民に自公政権の現実をつきつけるものとなりました。東日本大震災を通じて、セーフティーネットの重要性を認識したはずなのに、「こんな時に政治は守ってくれないのか」と、失望と怒りの声が広がっています。

② 医療やセーフティーネットの脆弱さが一気に表面化しました。この実態は、自民党政治が作り出してきたものですが、安倍・菅政権のもと、コロナ禍でもこの状況は修正されず、社会的弱者を中心に、被害が急速に拡大しています。暮らしや営業、命と健康など、私たちにとってもっとも大切な事柄のほとんどが、一刻も猶予のない事態に追い込まれています。

 

(2) 経済構造の変化と失業者の増大

① 新型コロナウイルスの感染拡大は終息する見通しは立っていません。治療薬とワクチンの開発・普及がすすんでも、感染拡大前の社会に戻ることはなく、数々の構造変化が起きています。大学生協は重大な経営危機に直面しています。縮小した雇用と営業が同じ形で復元することはなく、経済・社会のすべてにおいて、修正・転換が突きつけられています。

② 最も過酷な状況に置かれているのが、非正規労働者や女性(労働者)です。総務省が2020年12月25日に公表した11月の労働力調査によると、非正規で働く労働者数は2124万人で、前年同月に比べて62万人減少し、9カ月連続の減少となっていますが、男女別では、非正規雇用の男性が25万人減少で、女性が37万人の減少となっています。労働政策研究・研修機構が2020年11月にNHKと共同でおこなった調査によると、4月以降に解雇や雇い止めにあった割合は、女性が男性の1.2倍です。野村総合研究所が2020年12月に実施したパート・アルバイト女性の実態調査によると、コロナ禍の前に比べ約26%で業務量が減少し、うち5割以上減少(約40%)と「休業手当支給なし」を合わせた「実質的失業者」は90万人に上ると推計しています。

③ 従来の延長線上の政治・経済政策では、大量の倒産と失業者の発生を防ぐことができないことは自明です。経済効率を優先し、社会保障を縮小する新自由主義的な政策を、命と暮らし優先に転換する必要があります。

 

(3) 「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」と人と人との結びつき、社会の変容(革新)

① 新型コロナウイルスは私たちに「ソーシャルディスタンス」の確保を不可欠なものとしています。「人と人との関係」も、その修正・転換を迫られています。存立自体が「人と人との関係」にある労働組合への影響は計り知れません。

② すべての組織が転換を迫られていますが、変化(前進)の芽は生まれています。それらの長所と可能性を受け止めて、実生活と運動・組織に生かしていくことが必要です。

 

(4) 「エッセンシャルワーカー(社会で必要不可欠な労働者)」及び産業の社会的価値の見直し

① 新型コロナウイルス感染拡大の中でも、社会の基盤を(現場で)支えている大多数は、低賃金・非正規雇用などの労働者であり、その労働者が担っている産業であることが明らかになりました。

② そうした労働、産業の社会的な価値を自信と誇りを持って自ら発信し、社会的な見直を進めていくことが必要です。

 

(5) 「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」の正当性、必要性が明らかに

① 新型コロナウイルス感染拡大で露呈した日本社会の脆弱性は、生協労連が提起しているこの「政策」の正当性を証明するものとなりました。非正規労働者に対する雇い止めや解雇、休業手当の無支給などが蔓延し、非正規格差(雇用形態間格差)の深刻さが露呈しています。

② コロナ禍の現実でのたたかいと連帯を広げながら、新自由主義を克服する新たな社会・経済のあり方についての、認識の一致と運動の連携を広げていく必要があります。

【4】生協労連の組織の現状と課題

 

 以上に見た社会情勢のなかで、私たちの組織の現時点の概要を概観しておきたいと思います。

 

1.2018年に実施した「組織強化の事前調査レポート」より

(1) 生協労連加盟141単組の構成は、地域生協52単組(36.9%)、大学生協66単組(46.8%)、学校生協7単組(5.0%)、一般労組7単組(5.0%)、職域その他9単組(6.4%)となっています(※2018年時点なので、2020年5月時点では若干変化しています)。

(2) 地域生協では、ごく一部を除けば、機関会議は開催されています。職場集会や分会ができていないのは5単組です。大衆団交を実施しているのは9単組です。スト権投票をしていないのは21単組です。

(3) 大学生協は、大会が開けているのは2/3の単組、執行委員会が開けているのは半分弱の単組です。要求書を出していないのは5単組、不明が20単組です。1/3強の単組の状況を地連(生協労連)が把握できていません。

(4) それなりの拠点、組織人数が多い単組でも、執行委員会が成立しない、大会参加は委任状がほとんど、というところがあります。

(5) 学習・教育を受ける機会が限られていたり、実践と経験の蓄積がごくわずかのまま労組役員の役割を担う実態も少なくなく、人材育成上の課題が多い状況です。次世代役員育成は急務です。

2.単組形態の多様化

 

(1) 県域や複数生協にまたがる単組が増加しています(みやぎ、コープネットグループ、ユーコープ、日生協、CXC、北海道統一、岩手県大・盛大、大学栃木、大学群馬、東京統一、大学新潟、大学長野、東海統一、京都統一、阪神統一、関連一般関東/15単組)。今後も大学生協を中心に増えていく可能性があります。

(2) 地域、大学とも事業連合との集団的労使関係は、継続的な課題ですが改善が必要です。特に大学生協の全国事業連合化に対しては、生協労連全体としての対応方針が作られていません。関係する単組の統一要求、また協議レベルでは一定の前進が図られつつあります。

(3) (全国一般を除いて)一般労組が増加しています(関連一般関東、関連一般東海、生協関連・一般、関連一般中四国、関連一般九州/稼働中5単組)。現状は委託、事業連合オペレーター、福祉生協、争議のなかまを組織しています。一般労組の自立と支部・分会の組織強化に対する地連(生協労連含む)を中心にした支援体制に課題があります。

(4) 福祉単独労組、委託単独労組が結成されています(こーぷ福祉会、SBSゼンツウ長野宅配)。

(5) 合併が検討されている生協で労働者を組織している単組(コープネットグループ(にいがた)、とやま)があります。組織防衛課題含めた単組への支援が求められます。

(6) 現在、生協労連本部として、北海道地連とシーエックスカーゴに対して、人的、財政的な支援をおこなっています。

3.単産としての生協労連の現状と課題

 

(1) 現在の生協労連は、「単組連合会」であり、単組主権の尊重を前提に運営しています。一方で単組間の組織力量にはばらつきがあり、企業内労組化の問題も抱えています。そこを補い、また組織化を進めるために、「地連を軸に」をキーワードに、地連(部会)を重視した運営をすすめてきました。
(2) 生協労連は、産別として全労連(全国労働組合総連合)に加盟しています。全労連は各都道府県に地方組織をもっていますが、生協労連加盟の全単組のすべてが、全労連の地方組織に加盟しているわけではありません。
(3) 生協労連は、5中計以降、政労使で社会を動かせる力を持とうと、産別へのアプローチを試みてきました。しかし、社会を動かす力としての「産別労組」への見通しは立っていません。生協労連の中心課題である非正規運動や最低賃金は、地域の労働運動の中心課題でもあります。そこをどのように広げるか、生協労連全体の運動の底上げそのためにどういう組織機構にすればより前進を図れるか、検討が必要です。
(4) 介護などの専門性への対応が不十分です。
(5) 生協労連、地連における参加者の主な変化(集計可能なもの)は下表のとおりです。

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4.単組での労組活動(結集)を困難にする客観的要因

 

(1) 再雇用等のオープンショップの雇用区分が増加しています。また子会社・関連会社、委託会社、派遣会社の社員の増加により組織率が相対的に低下しています。

(2) コロナ禍の影響で一時的な「緩和」はありますが、人員不足により組織人数が減少しています。

(3) 非正規化も含め正規労組員減少による労組費収入の減少と、それに伴う労組専従削減も切実な課題となっています。

(4) 業務多忙、一斉休日の廃止、シフト制やフレックスタイム制等の導入等により、労組活動の時間が相対的低下しています。会議や集会、団交結集が困難になっています。

(5) 職場におけるコミュニケーションが低下しています。雇用区分の多様化や委託化などによる職員の分断がすすみ、一時金の有無などに違いが生まれ、一致した要求がつくりにくくなっています。

(6) 経営危機にある大学生協においては、労働組合への結集への高まりと同時に、リストラによる人員の大幅減少と、業務運営上の困難の影響を受けないか、懸念されます。

【5】第8次中期計画の要旨とスローガン、方針の柱

1.計画の要旨

(1) めざすことは、人権(個人の尊厳)を大事にする労働組合として、「ディーセントワークとジェンダー平等社会の実現」をすすめることです。
(2) 私たちがよって立つのは、「職場を基礎に労働組合を強めること」です。それは、なかまとともに成長し、「『私』が変える」と、声をあげるなかまによって作られるものです。
(3) 政策課題の最重点は、「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」にかかわる実践を、職場・地域で推進することです。
(4) 結果として、「地域の非正規運動の中心的な役割」を果たせる生協労連になることをめざします。

2.スローガン

 

 ディーセントワークとジェンダー平等社会の実現に向け、職場を出発点に、地域で非正規運動を広げ、「私」たちの手で未来を切り開こう

3.方針の柱

(1) 平和で持続可能な世界の実現をめざします。

(2) ディーセントワークとジェンダー平等社会をつくるために、自己責任社会と決別し、賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざします。

(3) 「私」が変える職場、地域、社会。一人ひとりが声を上げ、個人が主人公となる社会をめざします。

(4) 非正規運動の中心的役割をになう労働組合として、より一層の役割を果たします。

(5) 安心して働き続けられる生協(会社)と職場をめざします。

(6) 職場を基礎に労働組合を強化し、なかまを増やします。

【6】第8次中期計画方針

1.平和で持続可能な世界の実現をめざします。

 

(1) 憲法改悪を阻止し、あらゆる分野で憲法が守られ活かされる社会の実現をめざします。

① 改憲案を発議するために設置された憲法審査会の開催に反対し、憲法改悪を断念させます。

② 集団的自衛権の閣議決定撤回と違憲の安保法制は白紙に戻させます。

③ 憲法のあらゆる条項がくらしに活きるよう、立憲野党とともに、憲法及びくらしと労働の実態に即した法改正をすすめます。

 

(2) 核兵器をなくし、平和で戦争のない世界をめざします。

① 日本での核兵器禁止条約の批准を実現します。

② 沖縄での辺野古新基地建設は断念させます。

③ 日米地位協定を抜本改定させます。

④ 戦争体験を語り継ぐとりくみをすすめます。

⑤ 近隣諸国民と連帯し、非核の北東アジア地域の創設をめざします。

 

(3) 気候変動・気候危機に向き合い、自然と人間の共生、持続可能な社会をめざします。

① 原発ゼロを実現させます。

② 2030年に2013年比で60%以上のCO2削減をめざし、再生可能エネルギーの抜本的強化を求めます。

③ 東日本大震災からの一日も早い復興をめざします。

④ 気候変動(温暖化による影響)に起因する災害に対応できる地域づくりをすすめます。住宅再建支援の拡充等、災害に備えた法改正と体制を確立させます。

⑤ SDGs(持続可能な開発目標)に学び、世界の諸国民の運動と連帯していきます。

2.ディーセントワークとジェンダー平等社会をつくるために、自己責任社会と決別し、賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざします。

 

(1) 最低賃金は全国一律最低賃金制の確立と、時給1,500円以上をめざします。

① 最低賃金法を改正し、全国一律最低賃金制の創設をめざします。

② 政府や自治体に対し、全国一律最低賃金制を可能とする中小企業支援の抜本的な強化を求めていきます。

③ 全労連「アクションプラン2024」に結集し、地域間格差を是正し、どこでも、誰もが働けば人間らしく暮らせる最低賃金への底上げを実現させます。

④ 中央での要請や懇談や行動とともに、都道府県労連、地域労連とともに、地元選出国会議員や地方議会議員への要請や懇談で、地方から全国一律最賃制度を求める声を大きく広げます。

⑤ 職場や地域での学習と、宣伝行動にとりくみます。

⑥ 最低賃金署名は早期に10万筆達成をめざします。

⑦ 全都道府県で最低生計費試算調査を完了させます。

⑧ 中央・地方ともに、最低賃金審議委員の獲得・拡大をすすめます。

 

(2) 同一価値労働同一賃金をめざします。

① パート・有期法の実効ある改正を実現させるために、「人材活用のしくみ」の違いによる格差容認など、現行法の不備や矛盾点を可視化するとりくみをおこないます。いましている仕事が同じであれば、同じ賃金でなければならない原則を確立させます。

② 立憲野党による政権の実現を通じて、同一価値労働同一賃金法案を成立させます。

③ 企業横断的な同一価値労働同一賃金の実現に向けた社会的な合意形成をすすめます。

④ 同一価値労働同一賃金の国際水準が反映できるよう、ILOなど国際機関との連携をすすめます。

⑤ 現行パート・有期法を活用し、正規、非正規の間にある格差の点検をおこない、不合理な格差の解消をはかります。

⑥ 職務評価をおこない、委託・子会社含む、均等待遇を前進させます。

 

(3) 税の改革と社会保障の充実で貧困と格差のない社会をめざします。

① 消費税は廃止をめざし、当面、5%に引き下げさせます。

② 所得税・法人税の応能負担原則を累進課税の強化で徹底させ、総合課税化をすすめさせます。

③ 個人を基礎とした税・社会保障体制への転換をすすめます。

④ 医療、介護、福祉、生活保護制度などの社会保障制度の拡充、教育・子育ての費用負担軽減、住宅施策の拡充をすすめます。

⑤ 新型コロナウイルス感染等、感染症対策を抜本的に強化させます。

⑥ 北欧諸国などで実現している税・社会保障体制を学び、研究し、政策に反映させます。

 

(4) 「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」にかかわる運動を重点的・計画的にすすめます。(【7】1.参照)

 

3.「私」が変える職場、地域、社会。一人ひとりが声を上げ、個人が主人公となる社会をめざします。

 

(1) 人種やジェンダーなどのあらゆる差別をなくし、個人の尊厳が尊重される社会の実現をめざします。

① 憲法にも立ち返り、また、市民運動などの経験にも学び、人種やジェンダー、個人の尊厳について、学習を進めます。

② レインボープライドなど、各地でとりくまれている行動に参加します。

③ ジェンダーにかかわる社会の動きを注視し、積極的な発信をめざします。

④ 外国人労働者、障害者、性的少数者など、生協にかかわるすべての人の人権が保障され個人の尊厳が尊重されるよう、生協と労働組合組織の運営の改善をすすめます。

 

(2) 広範に広がる市民との連携をすすめます。

① 地域の総がかり行動、地域市民連合に積極的に参加します。

② 連合加盟労組などとも、懇談・共闘をすすめます。

③ 新しい組織・なかまとの共闘から多くのことを学び、取り入れます。

④ 選挙方針を確立し、地域共闘や選挙候補者の政策に、生協労連が重視する最低賃金、同一労働同一賃金などの課題(要求)を反映させます。

⑤ すでにある労組員の無数のつながりを活かして、地域から民主主義の共闘を広げます。

 

(3) SNS社会でのとりくみを飛躍させます。

① 基本の実践(twitterアカウント開設、SNS学習会)をすすめます。

② 日常的にSNSで発信されている情報(会話)を把握し学びます。

③ 労働組合の知的財産を発信します。拡散される発信を身につけます。

④ 広範な市民と結びつき、一致する要求でとりくみをすすめます。

⑤ 労組員一人ひとりから(「個人」の力を活かして)、多方面に多彩に共闘を広げます。

⑥ 労働組合の資産(事務所や備品)を市民運動にも有効に活用します。

⑦ 市民の感覚・発信方法などを積極的に学びます。

⑧ 結びついた方々に、労働組合を伝え、参加してもらいます。

 

(4) 私物化と自己責任押し付けの政治を終わらせ、政治を市民の手に取り戻します。

① 市民と野党の共闘を前進させ、立憲野党による連合政権を実現させます。

② 労働組合と政治・選挙について、基本的な学習をすすめます。

 

4.非正規運動の中心的な役割をになう労働組合として、より一層の役割を果たします。

 

(1) 「非正規運動の中心的な役割をになう労働組合」として社会的影響力を発揮します。

 

① 8中計の重点である「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」課題は、社会のあり方の変革を求める運動であり、社会を動かせる影響力が必要です。最低賃金や均等待遇、非正規運動をさらに推進することを通じて、生協労連が社会的影響力を発揮できる労働組合となることをめざします。

② 「非正規運動の中心的な役割をになう労働組合」としての実践を通じて、「生協の企業内労組」から、「地域で非正規と中小企業労働者を代表する労働組合」へと、より社会的影響力を発揮できる労働組合に発展させます。

 

(2) 幅広い組織とともに、非正規運動を推進します。

① 全労連・国民春闘共闘、都道府県労連、地域労連に結集し、非正規運動を強化します。

② 全労連非正規センターに結集し、「非正規差別NG」の推進をはかります。全都道府県での非正規センター確立をめざします。

③ 小売や流通、介護、大学、学校など、生協と共通する業態ではたらくなかまがつくる労働組合や諸組織との幅広い連携を強めます。

④ 反貧困運動や、中小企業団体など、労働組合の枠を超えた連帯、共同を追求します。

⑤ 世界の非正規運動に学び、連帯をすすめます。

 

5.安心して働き続けられる生協(会社)と職場をめざします。

 

(1) 労働条件を改善します。

① (企業内)最低賃金の引き上げを重点とした賃上げをすすめます。

② すべての労働者の時間給1,500円以上をめざします。

③ 人手不足を解消させます。

④ 所定内労働時間1,800時間以内、実労働時間2,000時間以内をめざします。

⑤ 休日増と年次有給休暇取得率向上をめざします。

⑥ インターバル制度導入や夜勤の制限などをすすめます。

 

(2) 生協(会社)のコンプライアンス及びCSR経営を追求し、不払い労働や労災事故の撲滅、過労死のない職場をめざします。職場における労安活動の前進をめざします。

① すべての生協・職場で労働安全衛生委員会を確立させ、内容を充実させます。

② すべてのなかまが個人(労働者)として尊重される、人権が輝く職場をつくります。あらゆるハラスメントをなくしていきます。

③ すべてのなかまが仕事に意見が言え、話し合える場を実現させます。

④ 2022年9月の第55回定期大会までに、月45時間を超える法定時間外労働をなくします。36協定の残業時間上限については、週15時間、月45時間、年360時間以内とし、協定時間の縮小をすすめます。新たな36協定の特別条項の導入は拒否し、現状の特別条項については、廃止をめざして改善にとりくみます。

⑤ 新型コロナウイルスなど感染症発生の際の感染防止対策や、日常の働き方について、産業医や保健師の助言のもと、理事会と協議し、安心して働き続けられる職場をつくります。

 

(3) 私たちが働く生協(会社)が、社会的な役割が果たせる、そのための仕事ができる環境の実現をめざします。

① すべての労働者が、生協(会社)の歴史や社会的役割を学べるよう、生協(会社)に求めていきます。

② 職種や業態別のセミナーや交流会を開催します。

③ 平和や環境など様々な課題で、生協(会社)との一致点での共闘をすすめます。

④ 産業別労働組合としての役割を果たせるよう、流通・小売業等にかかわる労働問題について、その改善を求める社会的発信を強めます。

 

(4) 民主的で対等な労使関係の確立をめざします。

① すべての単組が団体交渉を開催し、労使協議をおこなえるようにします。すべての単組がストライキ権を確立してたたかえるようにします。

② 労働条件の変更について、労使合意を徹底させます。

③ 労働協約の締結を推進するとともに、一方的な協約破棄をさせないようにします。

④ 日本生協連、大学生協連との懇談をおこないます。

 

(5) 大学生協で働くなかまの雇用と生活をまもり、生協の経営再建をすすめます。

① 困難を抱える学生支援をすすめます。

② 未組織労働者に労働組合を知らせ、加入を呼びかけます。全国合計で、3,000人以上の未組織労働者の組織化をめざし、非正規労働者の未組織生協を半減させます。

③ 労働組合の日常活動の再建・強化を徹底し、活動の改善を図ります。

④ 労働条件の一方的不利益変更をさせず、労使合意を徹底させます。

⑤ 経営再建策に労働者の意見を反映させます。

⑥ コロナ禍の困難に立ち向かいたたかう地域の諸団体との連帯をすすめます。

 

6.職場を基礎に労働組合を強化し、なかまを増やします。

 

(1) 職場を基礎に労働組合を強化します。

 

① なかまの願いを出発点とした、分会、労組員集会を広げます。

1) なかまに会えて笑顔が出る、思いを出し合って共感できる、学んで成長できる、なかまが「参加してよかった」と思える分会、労組員集会を開けるようにします。

2) すべての単組で、分会(または労組員集会)が開けるようにします。

3) 定型化されている「職場チェック」の活用などを通じて、自治を職場に根付かせます。

 

② 学んで気づき、成長する労働組合を広げます。

1) 新入労組員教室を開き、労働組合の基礎的な学習をすすめられるようにします。

2) 執行委員会、分会では学習の時間を必ず設定するようにします。

3) レクリエーションなどの機会にもミニ学習を設定するようにします。

4) 様々なテーマで、学習会が開けるようにします。

5) 地連・生協労連・外部の諸組織がおこなう学習会に参加できるようにします。

6) 年間の学習計画を作ることができるようにします。

 

③ 「私」がなかまとともにたたかって、前進・成長する労働組合を広げます。

1) 「私」となかまの願いを出発点に、自らが主人公となり、団体交渉や労使協議会、ストライキに参加するなかまを増やします。

2) 身近な職場で、なかまがなかまを誘って、「私」となかまが変える経験ができる、要求が実現できる労働組合を広げます。

3) すべての単組で、すべてのなかまが参加できる団体交渉(職場労使協)を実施します。

 

④ 「私」がなかまとともに、地域、社会を変えていく力を発揮する労働組合を広げます。

1) 一人ひとりが、分会が、単組が、それぞれの当事者として、職場で、地域で、国に、関心事(私ごと)から、労働組合にかかわります。

2) すべての過程で、関わった一人ひとりが、知る、学ぶ、点検する、話し合う、改善する、成長し視野を広げ、とりくみを発展させます。

3) たたかいと学習を通じて、自分や職場の困難の延長線上に、社会のしくみがあることに気づくことが重要です。職場を出発点としたたかいから、地域・全国のなかまと連帯を広げ、社会や地域を変えることができる労働組合を広げます。

 

⑤ 次世代役員の育成をすすめる方針を確立し、早期に執行できるようにします。

 

(2) 要求実現を基礎に、「なかまがなかまをさそう」組織拡大をすすめます。

 

① 生協と関連で働くすべてのなかまを対象に組織拡大をすすめ、10万人の生協労連をめざします。この中計期間中は7万5千人を到達目標とします。

② 委託・子会社のなかまの組織化を最重点にすすめます。宅配業務にたずさわる約5,600人の労働者の一割を組織します。

③ アルバイト・再雇用、登録ヘルパー等パート以外の雇用区分で働くなかまを増やします。要求課題を実現するための組織化を推進し、組織化キャンペーンなどにとりくみます。

④ 委託、一般、アルバイト、大学パート、登録ヘルパーの組織拡大に財政支援します。

⑤ 「なかまがなかまを誘う」とりくみをさらに広げます。また、「なかまがなかまを増やす」とりくみ事例を、体系的に広げることができるなかまを増やします。

⑥ 中央執行委員会と組織拡大推進委員会が両輪となり、目標達成の責任を果たします。組織拡大推進委員会については、コミュニティーオーガナイズジャパン(COJ)やトラブルメーカーズスクール(TMS)に学び、会議内容や委員の役割に反映できるようにします。

 

(3) コロナ禍での労組活動の工夫をすすめます。

 

① リアルに集まる場合の感染症対策をしっかりとおこないます。

② オンラインを活用します。

1) 分会、執行委員会などをzoomなどのオンラインで実施できるよう推進します。

2) 声やアンケートについて、Webでの集約ができるようにします。

 

(4) 生協労連として重点を定め、組織課題を具体化します。(【7】2.参照)

【7】第8次中期計画の最重点政策課題と生協労連の組織課題

 

 第8次中期計画の政策課題の最重点である「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」の実現に向けたアクションプランを確認します。また、生協労連の組織課題を以下のように具体化します。

 

1.「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」の実現に向けたアクションプラン

 

 第8次中期計画では、【6】の計画の全体としての達成をめざしつつ、とりわけ「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」の推進を軸に、運動を強めていきます。

(1) 「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」を実現させるための基本方針

① 最低賃金と均等待遇を突破口として、「非正規」の運動として社会的影響力発揮します(社会を変えていきます)。
② 地域で理解と運動を広げます。県地域労連と、地域で多数者である非正規と中小企業労働者と共闘してとりくみ、地域の圧倒的な世論にします。
③ 職場で理解と運動を広げます。春闘学習資料、大会資料、生協のなかまで、繰り返し学習資材を提供するなど、地連で、単組で、地域で繰り返し学習します。
④ 地域での運動を推進するために、地連を軸に、都道府県単位の運動を強化できる組織運営を強化します。それを通じて、地域の運動を担える単組・支部を作ります。
⑤ 起案と実践と検証を繰り返し、次の展望を実践的に切り開きます。

(2) 「非正規運動の中心的な役割をになう労働組合」として、中央執行委員会で「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」への理解と運動を広げます。

① 中央執行委員会は、全労連とその民間部会や各部会のなかで、最低賃金と均等待遇の運動の牽引とともに、この「政策」を普及します。
・ 各会議体、加盟組織に対し、DVD視聴と感想を依頼し、普及します。
・ あらゆる行動や発言の枕詞として「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」を位置づけ、普及します。
② 中央社会保障協議会や、年金者組合、女性運動などとこの「政策」についての懇談をおこない、情報交換を通じて、運動とそのアイデアを広げます。
③ 中小企業家同友会などとこの「政策」についての懇談をおこない、情報交換を通じて、運動とそのアイデアを広げます。
④ 全労連・他団体をまきこんだシンポジウムを開催し、普及と政策の進化をはかります。
⑤ 中央で、地連単組がとりくむことを明確にし、合わせて、その進捗の点検と経験交流をして、計画的に運動を推進し、かつ実践を通じて政策ととりくみ方を進化させます。
⑥ 都府県協の活動強化のために、活動費を一部補助します。
⑦ 地域での実践を通じて、この「政策」の実現に接近する次なる展開を創造します。
⑧ この「政策」をより社会に普及するために、わかりやすく結集しやすい呼称に変更します。

(3) 「非正規運動の中心的な役割をになう労働組合」として、地域で「賃金と社会保障のセットで、年収270万円でもふつうに暮らせる社会をめざす政策」への理解と運動を広げます。

① 都道府県労連・地域労連とともにとりくみます。
② 特に、地域で多数者である非正規労働者とこの「政策」に親和性が高い中小企業労働者(委託労働者)とのつながりつくりにチャレンジし、ともにとりくむなかまを増やします。
③ 地域の社会保障関連の諸団体、女性組織とともにとりくみます。
④ 非正規労働者と中小企業労働者を代表し、中小企業経営者と共闘します。
⑤ 中央での要請や懇談や行動とともに、今まで以上に地域を重視して、この「政策」に関連づけて、地域で最低賃金と均等待遇の運動が進むように、中心となって推進します。
⑥ 各都府県協で、その地域の労働組合や各種団体に、政策を普及するために、DVD・紙芝居・学習資材などを配布し、講師として訪問し学習会を実施します。とりくみやすさ、わかりやすさを考えて、多様にチャレンジします。
⑦ 各都府県協で、この「政策」に関するシンポジウムを開催します。
⑧ 各都道府県に、地域に、この「政策」を推進する委員会を結成し、地域で運動を作ります。
⑨ 「非正規」「委託」「中小企業労働者」の受け皿と運動母体として、都道府県労連の一般労組の運動に積極的に参加し貢献します。

(4) 地連を軸に、都道府県単位の運動を強化できる組織運営をすすめます。

① より地域に軸足を置いた組織のあり方に変えていきます。
1) 都道府県単位の活動の具体化を地連執行委員会に位置づけます。地連執行委員会は、全都府県から参加できるように役員構成を工夫します。
2) 生協労連としての都府県での連携と活動の強化をすすめます。都府県協の再開・設置をすすめます。その役割は、日常的な単組支援と地方労連・地域労連との共闘及び組織化の推進とし、各都府県の可能な単組が取りまとめ役となるようにします。
3) 複数県にまたがる単組は支部・分会単位で都府県協加盟できるよう整備をすすめましょう。

② 地連が、各都道府県の状況を把握し、運動の起案と進捗管理に責任を負います。
1) 地連で、中央の提起にそって、みんなで話し合いとりくみを具体化し、みんなで実践します。
2) 実践経験を集約し交流して、各単組の創意工夫をみんなのものにします。
3) とりくみを検証し、課題を明確にして、さらなる措置を講じます。
4) とりくみを全国にフィードバックします。

③ 単組の担い手や組織運営に困難さが生じてきている中で、全体としてとりくめるように、地連は単組をバックアップします。
1) 起案・進捗管理を地連で行うことによって、単組をバックアップします。
2) 「できるとりくみ」を提起するなど、運動が進むように支援します。
3) 組織運営や事務作業の負担を軽減し、やるべきことに集中できるように、困難単組の運営をバックアップします。
4) 組織統合も選択肢とするなど、本部機能を集中し、地域でできることを広げます。

 

2.生協労連の組織課題

 

 定期大会、中央委員会、中央執行委員会を中心としたこれまでの組織運営を継続しながら、とりわけ以下の点を強化していきます。

(1) 学習・教育と人材育成をすすめます。
① 新入協時及び新加入時の労組学習資料(セット)と、初めて労組役員をする人向けの学習資料(セット)を作成します。
② わくわく講座、労働者教育協会の通信教育の受講者を増やします。
③ 中央委員会、中央執行委員会、部会、委員会など会議体を基軸に、学習を推進します。
④ 財政の厳しい単組での若手及び非正規専従配置のための財政補助をします。
⑤ 学習教育大綱の実践状況を振り返り、課題を明らかにしていきます。
⑥ 労働組合専従(生協労連本部含む)の育成方針を早い時期に確立します。
⑦ 学習教育と人材育成をすすめるための委員会を設置します。

(2) 労働運動、市民運動で普及がすすむ「組織化」にかかわる手法を学び、組織活動に反映させていきます。
① COJの講習受講を推進します。
② 生協労連版ワークショップ型の組織化セミナーを開催します。ワークショップのコーチを担える人材を育成します。
③ すべての地連にオルガナイザーが育成できるよう、集団的に組織化をすすめます。

(3) 委託労働者の組織化と一般労組の強化をすすめます。
① 委託部会を結成します。委託の実態を広く社会に問題提起するとともに、全国の生協労組でとりくみが推進されるようにしていきます。
② 当面は一地連に一つの一般労組を基本に、地連が主体となり運営・支援します。長期的には都道府県単位をめざします。
③ 企業横断的な労働組合として、地域の非正規労働者や中小企業労働者をサポートできる視野と力を身につけていきます。
④ 一般労組への財政補助をおこないます。
⑤ 地域の一般労組との共闘を強めます。

(4) オンラインツールを充実させ、いつでも誰でも労働組合に参加できる条件を整備します。
① 会議室での会議、電話、メールなど従来のシステムも大事にしながら、オンライン会議(zoomなど)やLINEなどのオンラインツールの活用を推進します。
② 希望する誰もが参加できるよう、学習機会を多彩に設定します。
③ 地連・単組で会議・交通費の見直しなどと合わせて、基礎的なインフラを整えられるよう推進します。
④ 常設されている部会だけではなく、要求・課題に即したネットワークを臨機応変、様々な機会に具体化します。

(5) 部会は学習と交流を基礎とし、地連単位の活動力量を引き上げていきます。
① 部会は、引き続き学習と交流を基礎に、「私」の誰もが参加できる、自主的なとりくみを継続します。オンライン会議システムなども活用し、気軽に参加できる部会活動を広げていきます。
② パート部会、青年部会、女性部会、大学部会については、各地連の部会を確立していきます。
③ 学校部会、介護部会、委託部会については、全国での部会活動を基本に、実情に応じて地連での交流会開催などを追求するとともに、可能な地連では部会を設置します。

(6) 強化する財政支援の概要は以下の通りです。
① 委託、一般、アルバイト、大学パート、登録ヘルパーの組織拡大への財政補助
② 一般労組での組織拡大行動への財政補助
③ 財政の厳しい単組での若手及び非正規の専従配置のための財政補助
④ 都府県協への財政補助
⑤ 現在支援している単組(CXC)・地連(北海道)への補助の一定期間(終期未定)の継続
⑥ 学習に対する支援(通信教育やCOJ受講などの補助を想定)
⑦ その他、活動方針の具体化に合わせ、財政措置を具体化する場合があります。組織拡大推進基金を趣旨に照らして活用します。

(7) その他
① 定期大会、中央委員会、中央執行委員会を軸とした機関運営をすすめます。オンライン会議の規約・規定を整備します。
② 部会、委員会を設置し、運営します。必要に応じて部会、委員会の見直しをおこないます。
③ 国際活動を推進します。
④ ホームページを改善し、SNSでの発信を強化します。記者会見を重視し、社会的発信力を強めます。
⑤ 組織財政の100%登録を推進します。
⑥ オンラインの普及にともない、地連活動費の見直しをすすめます。
⑦ 発行物の一部ペーパーレス化(PDF化)をすすめます。
⑧ オンライン会議を、コロナ禍以前との比較で拡充させます。
⑨ 生協労連本部の専従配置が計画的にすすむようにします。
⑩ ILOの基本条約の批准を推進します。
⑪ 組織拡大推進基金(9中計)を積み立てます。
⑫ パンデミックや異常災害発生時にも組織を継続できるよう、基金を積み立てます。

以上

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